7 研究協力者の権利回復(研究資料の廃棄)

「上智大学「人を対象とする研究」に関するガイドライン」には、「研究対象者が同意を撤回したときは、速やかにその情報やデータ等を廃棄しなければならない」(5(2)カ))とする明示規定があります。研究資料の廃棄を実現することは、本件被害者らの権利回復の中核をなすものです。

被害者による権利回復の行動は、次の4つの当事者を対象に順次行われます。

  1. 研究実施者
  2. 研究責任者
  3. 研究機関
  4. 監督機関

以下、研究不正の被害者の権利回復のための行動とその根拠について報告します。

(1)出崎幹根(研究実施者)に対する撤回要求

 被害者らは5月30日に記者会見を行い、元大学院生出崎に対して、現在公開中の映画の上映中止を要求しました。この時点で、出崎には、研究実施者として、研究資料を自身の研究で使用せず、また、他の研究を含む一切の別の用途にも使わない学術倫理上の責任が生じました。しかし、これを、出崎は拒否しました(6月3日の記者会見)。

(2)中野晃一(研究責任者)に対する撤回要求

次に研究資料廃棄の履行義務があるのは、研究責任者(指導教員)です。研究責任者が誰であるかは、本人および上智大学当局の隠蔽により長らく確定的には判明しなかったのですが、東京地裁にて係争中の民事訴訟の被告側答弁書(9月17日付け)において、研究責任者(指導教員)が中野晃一であることが、初めて公式に判明しました。

私たち7名は、その研究責任者である中野晃一教授に対して、2019年10月1日前後の日付で出崎の「卒業制作」作品及び現在公開されている映画「主戦場」から、私たちの研究資料を回収し、残余の全てのコピーを破棄するよう要求する「研究参加同意撤回書」を提出しました。この要求に対して、中野教授が誠実に履行する姿勢を示さなければ、研究倫理違反が確定し、処分の対象となります。

(3)上智大学(研究機関)に対する撤回要求

 中野教授が誠実に研究資料廃棄の履行義務を果たさなかった場合は、責任は中野教授の所属する研究機関である上智大学に移ります。上智大学は、回収・廃棄を機関の行為として誠実に取り組むとともに、回収・廃棄の履行義務に意図的に違反した、出崎および中野教授に対し、故意の研究倫理違反として処分を実施しなければなりません。

(4)文部科学省(監督機関)に対する救済の申し立て

 上智大学が仮に、この回収・廃棄の履行に誠実に取り組まなかった場合、監督官庁(文科省)に責任は移り、監督官庁は指導・省令その他の方法により、同学に対して履行を命じなければなりません。同時に、研究不正への自浄能力の欠如をさらした学術研究機関としての上智大学に対して一定の処分を実施しなければなりません。

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